
世界的な流行り病が収束してから、インバウンドがここ数年活況です。
インバウンドというと、近隣国の方の爆買い、団体旅行、短期滞在の方が多かったのですが、これがモノではなく体験などコト消費へ、団体旅行は個人旅行に、短期滞在はあいかわらずおおいのですが、じわりと長期滞在へと変わってきています。また、かつては効率重視で旅行の拠点の宿は、都会でできるだけ安くが中心でしたが、ここ数年は、のんびりとできる地方で、高級志向の旅館やホテルが伸びています。
また、欧州・欧米のお客様の環境や社会への意識は、日本より高くESG的な観点の取り組みをすることがもとめられています。
「サスティナブルな取り組みをしている旅館やホテルを選ぶ」そういう傾向がつよいことも、旅館やホテルのインバウンドでは欠かせないポイントになっています。
これを裏付けるように、ブッキング・ドットコムが発表した「サスティナブル・トラベル・レポート2023(https://x.gd/ttXgs)」の内容を引用しながら解説していきます。
- 世界全体で76%の旅行者がサスティナブルな旅行をしたいと答えています。(日本は56%)
- 43%の旅行者はコストはかかるがサスティナブル認証の旅行に追加料金を支払うと回答(日本は22%)
- サスティナブルな旅の選択肢が十分でないと回答している旅行者は世界、日本とも約50%
- 旅行会社にサスティナブルな旅の選択肢を提供して欲しいは、世界で74%(日本は53%)
これを端的にまとめると、ホテルや旅館でインバウンドの顧客を狙うのであればサスティナブルな取り組みを行い積極的に発信することが成否をわける。といえます。
インバウンドに有利?サスティナブルな取り組み
例えばですが、ホテルや旅館でサスティナブルな取り組みというと、環境関連で脱炭素か生物多様性のどちらかの取り組みが求められます。
脱炭素であれば、単純に使用する電気を再生可能エネルギーのものに置き換える。がすぐに始められて確実なものになります。
また使用する電気機材をできるだけエコなものに変えるなどもその一つです。
生物多様性については、主に食材が中心になると思います。
産地などのトレーサビリティが効いて、搾取的で乱獲されていないものを利用している。
というのは指標になると思います。
これらから、さらにいまからできてより一歩踏み込んだ取り組みをとなると、外せないものがアメニティや備品・資材の脱炭素化になります。
もちろん、アメニティや備品・資材を脱炭素にしたところで大きな効果を発揮するか?と言われるとむずかしいこともあります。
ですが、お客様の手に触れてメッセージを伝えられるものということもあって、案外と外せないポイントです。
サステナブルな取り組みの見える化
アメニティや備品は、サステナブルな取り組みを「見える化」できる最適なアイテムです。
直接お客様が手に触れることができて、細部のこまかなところまで欠かさずに徹底できるその企業姿勢を表現できます。
- 脱炭素資材を使ったことを、商品タグや案内カードで説明する。
- 「この歯ブラシはエコ素材を使い、環境負荷を軽減しています」
- 「このトレーは再生プラスチックを100%使用しています」
といった具体的な情報をさりげなく明記することで、宿泊者に取り組みの意義やストーリーを伝えることができ、いっそう共感を生みやすくなります。
アメニティ・備品/資材をどのように環境対応するか?
ホテルや旅館で、アメニティをはじめ備品、資材をどのように脱炭素や生物多様性に対応させていくのか?についてです。
まずは備品や資材からですが、ドライヤーやポットなど熱効率の良いものに置き換える。
というのはいますぐはじめることのできるものです。
ほかには、ゴミ箱やハンガーなどを地域の木材でつくり、伝統的な木工加工技術を後世につないでいます。といった訴求でもサスティナブルな取り組みを伝えられます。
伝統技巧を用いて、モダンなデザインにする取り組みでは、さまざまに作ってきた実績があるのですが、とくに伝統的な技巧を活かしたものとして漆器の曲げの技法を活かして木製の商品をつくっています。

均等に木に薄く切り込みをいれて、ぐいっと曲げると綺麗な丸角ができます。

箱として使うのでつなぎ目まできれいに収まるように切り込みを調整するので、0.1mm以下の目に見えない職人技の調整が必要になります。

この技術を用いて、ゴミ箱をはじめトレイなどをつくることができます。
さらに言えば、今日本の森は、人の手が入らなくなったことで環境が悪化しています。
例えば、ここ数年、山や森に棲む動物が街・都会に降りてきて問題を起こすことがニュースになっています。森に林業などの人の手が入らなくなったことで、森にいられなくなったり、森で食べるものに困ったため街に降りてきていることが原因のひとつとされています。
ほかにも少しの雨風で土砂崩れが起きたり、脱炭素でも二酸化炭素吸収効率が悪くなるなどの問題があります。
日本の森の木をつかうことで、この人の手を取り戻して生物多様性や土砂崩れ(インフラ)、脱炭素などへの具体的な取り組みとなります。

歯ブラシや櫛などのアメニティを脱炭素や生物多様性に対応するとなると、プラスチック製のものに再生資材を用いたり自然素材のものをまぜたりといったことで対応が可能です。
ただ、これは実際にはプラスチックに混ぜる資材の回収に炭素や環境負荷がかなり発生していたり、再生資材や自然素材をプラスチックに混ぜられるようにする工程(ペレット化)でとんでもなく炭素が発生したりします。そしてそれらは、製品に記載がされない。ということがよくあります。
もっというと、自然素材で食品廃棄物(コーヒーカス)などを用いている場合には、素材回収工程で社会的に問題のある回収がされていることもあります。
広島大学学術情報リポリトリ 「廃棄物回収児童への社会配慮に関する一考察 <研究ノー ト>」
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00045579?utm_source=chatgpt.com
食品になるものをプラスチックに混ぜることは、人口あたりの食品需給などに関わるため使用しているとネガティブになることも…
出所の確かな、自然素材、作るところの確かな工場と工程でつくる。というのが一番たしかで安全な手法になります。
サスティナブルプラスチックKitto+でアメニティをつくる
ホテルや旅館のアメニティというといろんなものがあります。
とくにこれまでプラスチックでつくられていたものをあげると、客室のコップ、歯ブラシ、髭剃り、コーム、ハンガーなど。ただ、すべてをというのはむずかしいのでとくにハンガーをKitto+のものでつくった場合の脱炭素、生物多様性、社会性の貢献について書いていきます。

今回は実物がないため、イラストにて、コートやジャケットなどをかけた際に型崩れしにくいハンガーを想定します。
プラスチック部分の重さは、大体120g
Kitto+であれば、私たちの木工加工で発生する日本の森の木の端材、おがくずをつかって、51%を木としてつくれます。
そのため、このハンガーをKitto+へ置き換えるだけで61.2gのプラスチック使用量を削減できます。
部屋数が30-40部屋クラスの旅館であれば、一棟あたり300-350本くらいこのタイプのハンガーを使っていると思われるので、すべてを置き換えたとして脱炭素になる数字を算出してみます。
1 本あたり、61.2gのプラスチック使用量削減
一棟あたり300-350本使用 18,360g~21,420g
だいたい、18.3kg~21.4kgのプラスチック、化石燃料資源の使用量を削減可能。
さらに、木の光合成によるグリーンカーボン、脱炭素計算をしてみます。
林野庁が用いる木の炭素固定計算をもとにすると、61.2gのおがくずや端材には97.7gのCO2が吸収固定されて、大気から削減されます。
一棟あたりでは、29.3kg~34.2kgのCO2吸収削減効果が見込まれます。
一般家庭では、大体5.9~6.9日分のCO2吸収効果が見込めます。
脱炭素の観点以外では、これをつかうことで、あれている日本の森に人の手を取り戻すアクションとなります。
旅館やホテルによっては地域貢献、地方創生として、地元の森の貢献をしたい。という場合には材料を支給もしくは材料指定(都道府県単位でできることがあります)で地域に貢献することもできます。
ホテルや旅館でのサスティナブルなアクションは、脱炭素もよいのですが同時に生物多様性や、地域の木材をつかった地域貢献、文化貢献の方がエシカルな訴求ができてよいかもしれません。
Kitto+は、脱炭素になるだけでなく、生物多様性の貢献にもなります。
まとめ
ホテルや旅館のアメニティをKitto+で作った場合、脱炭素はもちろん、生物多様性の貢献になります。
さらに、地方創生、地域貢献として産地指定の木材、支給材でつくることができます。
Kitto+ではなく通常の木工加工では伝統技巧を用いて、技術継承にも貢献できる仕組みがあります。
とくに、インバウンドであれば地域の観光資源をいかにたもつか?も大事な要素になっていきます。
ホテルや旅館のある地域の森、里山のゆたかな環境、文化をながく未来にのこせる。そんなサスティナブルな取り組みが盛りだくさんです。
では、最後までお読みいただきありがとうございました。